会長挨拶
会長挨拶
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日本工学会 会長就任のご挨拶「イノベーション推進における日本工学会の役割」
このたび日本工学会の会長を拝命いたしました。長い歴史を有し、我が国の工学の発展とともに歩んできた本会の重責を担うにあたり、身の引き締まる思いとともに、深い責任感を感じております。
私はこれまで、東芝において技術担当の役員として、研究開発から製品化に至るまでの実務に従事し、企業の最前線において技術革新を牽引してまいりました。その後は、経団連およびCOCN(産業競争力懇談会)において、産業界全体の視点から、我が国のイノベーション政策の立案・提言を主導し、企業の知と社会のニーズとを結びつける橋渡しの役割を果たしてきました。さらに、内閣府における戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)などの国家プロジェクトの推進責任者として、アカデミア・産業界・政府それぞれの強みを結集し、我が国全体のイノベーション・エコシステムの構築を目指した取り組みを推進し、産業界における現場での実践経験と、政策形成の中枢、そして国家プロジェクトの運営という多様な立場を通じて、工学の力を社会に結びつけ、実際の課題解決へとつなげる活動に従事してまいりました。こうした知見とネットワークを活かし、日本工学会を「知と実践の連携のハブ」として、より一層、イノベーションの推進と社会課題の解決に貢献していきたいと考えております。
現在、我が国が直面している課題は極めて多岐にわたります。気候変動への対応、脱炭素社会の実現、少子高齢化と人口減少、安全保障、産業競争力の維持・強化、地域経済の再生、さらには食料・エネルギー問題など、いずれも喫緊かつ構造的な課題です。これらの多くは、工学的な視点と技術的な革新、すなわちイノベーションによってこそ打開されるべき課題であると強く認識しています。そして、こうした複雑な社会課題を乗り越えるためには、基礎から応用、さらには社会実装に至るまで、あらゆる段階での「知」の連携と融合が不可欠です。ここで中心的な役割を果たすべきは、各工学系学会であり、それぞれが培ってきた高度な専門知を、横断的・融合的に結びつけていくことが求められています。日本工学会は、まさにその「知の接点」として、学術と産業界、アカデミアと社会をつなぐ架け橋となるべき存在であると思います。
日本工学会ではこれまで、以下の四つの柱を軸として活動を推進してまいりました:
- 工学系学会間の連携強化と学際融合の促進
- 若手研究者・技術者の育成とイノベーション人材の支援
- 産学官の橋渡し機能と政策提言力の強化
- 国際連携を含めた情報発信力の向上
これらの取り組みを着実に推進しながら、今後はより一層、会員各学会との連携を深め、日本における「知のプラットフォーム」としての中核的な存在となることを目指してまいります。すべての工学系学会の知見を束ね、学際的な連携を深化させ、社会全体のイノベーションのエンジンとして、日本工学会が確かな存在感を示すべく、誠心誠意、職務に邁進していく所存です。
結びに、会員の皆様をはじめ、関係者の皆様におかれましては、今後とも変わらぬご支援とご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
令和7年6月6日

公益社団法人 日本工学会
会長 須藤 亮
((株)東芝 特別嘱託)




